株式会社錦水館「ホテル宮島別荘」

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宮島発のローカルガストロノミーで学びと感謝を伝えたい 一 株式会社錦水館「ホテル宮島別荘」

株式会社錦水館 ホテル宮島別荘
支配人兼総料理長 石岡 秀樹様

2025年の来島者数が過去最多記録を更新した宮島。496万人超の人々が行き交う宮島の玄関口にホテルを構えるのが、1902年創業の錦水館グループ。錦水館とホテル宮島別荘の2つの宿を経営する6代目武内智弘氏は、環境保全や地域社会への貢献を重視し、自身もスタッフも生生流転の世の中に合わせて挑戦できる改革を進めている。
ホテル宮島別荘は、2017年のグランドオープン以来、大手旅行会社や旅行サイトのプロフェッショナルからも高い支持を得ている。2025年秋、総料理長に就任した石岡秀樹氏は支配人も兼任し、「料理人の視点で経営に携わることで、地元の生産者を支援し、その価値を守りたい」と、メニューの8割を広島県産に。宮島の文化と広島の食の魅力を融合させた“ローカルガストロノミー”で旅の醍醐味を存分に味わう旅を提供したいと語る。

宮島を拠点に、非日常と日常を往来する豊かな自分時間をつくる

ホテル宮島別荘は東京から5時間。船でしか行けない憧れの島暮らしを体験してみたいというお声を取り入れた客室は、宮島での暮らしをイメージした「町家」、「海」、「山」の異なる3つのコンセプトルームがあり、おこもり感を味わえる一番小さな「山小屋風のロフトスタイル」から、4ベッドタイプの「スイートルーム」まで洗練された設えと快適さにこだわり、長期滞在やリピーターのお客様が増えています。宮島の「町家」は江戸時代から続く独自の伝統的な建築様式で、嚴島神社に向かう参道に保存地区があり、食べ歩きやカフェで過ごすのもおすすめです。スタッフは皆、「宮島の思い出づくりアドバイザー」と称して、滞在目的に応じた情報をご提供しています。私は、宮島の人たちの風習が見られる夕暮れと早朝が好きですね。御笠浜の夕日が波の音の中にゆっくりと消えていく美しさは特別です。
宮島を拠点にして、広島市の原爆ドーム、大竹市の下瀬美術館、岩国市の錦帯橋を旅行するお客様が増えています。広島県は温暖な瀬戸内沿岸側と、スキー場が点在する中山間地域側とでは、人の営みも食文化も異なる魅力があります。フェリー、バス、路面電車を利用すれば、日常に溶け込みながらゆったりと移動を楽しみ、地域文化に触れることができます。非日常のなかで日常の暮らしに触れられる宮島が、お客様にとって住み慣れた地元のように離れがたい場所になると嬉しいですね。

瀬戸内海を望む「海」のコンセプトルーム。波音と潮風を感じながら、島暮らしの静けさに包まれる。

ホテルシェフへの道のり

小学生の頃に観た「料理天国」というテレビ番組で監修を務めておられた辻静雄さんと料理人の皆さんのかっこよさに衝撃を受けて、将来はフランス料理のシェフになると決めていました。夢の切符(調理師免許)を手に入れるため、辻さんが創設された大阪あべの辻調理師専門学校(現:辻調理師専門学校)に入学すると、全国から自分と同じ夢を抱いた子たちが大勢集まっていて、寮生活も楽しかったです。早く上達したいと格闘した日々は、実習も多くて、想像よりも厳しかったけれど、就職した後のほうがはるかに過酷でした。
1988年、都ホテル大阪で料理人としてのキャリアをスタートしましたが、同時にホテルマンとして身につけなければならないことが山のようにありました。バブル時代全盛期に3つのホテルで修行しましたが、日本ではなかなか見ることのない外国の最高級食材を使って、名だたるシェフたちが腕をふるった独創的できれいな料理が、大広間いっぱいに並べられてキラキラと輝いていました。その裏で、大勢のスタッフがお客様のためにOneTeamとなって、丁寧で地道な仕事をするという姿を目の当たりにしてきました。ザ・リッツ・カールトン大阪、リーガロイヤルホテル広島など国内のホテルやレストランでフランス料理とイタリア料理を学び、2011年に開業準備を進めていたシェラトンホテル広島でメインキッチンの副料理長を経て、2019年にホテル宮島別荘の料理長として迎えられました。クラシックとモダン、受け継がれる伝統や精巧な技術に敬意を払い、いつも新しいことに挑戦したいという情熱が、今の私のスタイルを作っていると思います。

大阪で抱いた夢、ホテルで学んだチームワーク。そのすべてが今、宮島で形になる。

廿日市市にくる価値は絶対ある

世界で活躍するアル・ケッチャーノの奥田政行シェフと出会って視点が変わりました。奥田シェフには、ホテル宮島別荘のレストラン〈Shima Classic〉の料理監修を務めて頂いています。「地域全体を見てもらい、新しい一皿の料理にして食べる人へ伝える」奥田さんの料理と哲学に感動して「これだ!」と思いました。
「美食都市アワード2025」に、中国地方で初めて廿日市市が選ばれましたが、これからますます、食べる人へ食材のストーリーを伝えることが重要だと感じています。世界中からやってくるゲストをもてなすために、調理スタッフは多様な食文化(フードダイバーシティ)に対応できる知識と技術を持っていて、ビュッフェ料理で提供することもSDGsと定義を明確にすることで、芳醇な食の体験が視野を広げてくれ、SDGsを考えるきっかけになればいいと思うんです。
大切なことはコミュニケーションです。数が揃わない魚や野菜をホテルで使うのは難しいことですが、今冬のように牡蠣が壊滅状態という場合、仕入れ先に「では、牡蠣じゃない海産物は何がありますか?」と訊きます。食材を確認するとスタッフからは「こんなお料理はどうですか?」と次々に提案されます。 
中岡農園から、今日は里芋の親芋がたくさん届いています。市場にはあまり出回りませんので、中岡さんと出会うまでは見たことがなかったんですが、煮たり揚げたりすると美味しくて。中岡さんはご家族で、宮島で野菜を作っています。しゃもじの木くずや海藻を肥料にした自然農法で、味は抜群です。ホテル宮島別荘は、オープン時からビュッフェスタイルでお食事を提供すると決めていたので、中岡さんとは金額の上限だけ決めておいて、持ち込まれた野菜をすべて買い取ります。畑から直行です。武内社長も、スタッフも、「今日はどんな野菜が届くかな」と話していて、届いてからメニューを決めています。

届いた野菜から始まる料理。中岡農園とのパートナーシップが育む、持続可能で多様な食の営み。


ホテルの玄関に、島内では珍しいベーカリー<島旨PAN>を併設しています。「塩あんバター」は、博多屋のもみじ饅頭のこし餡を使っています。宮島育ちの社長同士の友情から生まれたヒット商品です。広島県が誇る幻の和牛「比婆牛」は、スライスする過程でどうしても出る端材を使った新しいレシピを考えて欲しいと言われて、比婆牛のミンチとビーツのピュレとを合わせたペーストと、干した女鹿平舞茸のペーストと、チーズをフランスパン の上に重ねた「比婆牛のクロスティーニ」を作りました。食材の物語を知ってもらってから食べてもらう努力を続けたいので、宮島の文化と広島の食の魅力を融合させた“ローカルガストロノミー”を深く体験できる旅をつくりたいですね。地域をつくるのも食、多様で豊かな食を盛り上げるためにできることをやりたいと思います。 

食材のストーリーを味わう<島旨PAN>。地元の絆から生まれた「塩あんバター」、端材を活かした「比婆牛のクロスティーニ」が体現する、持続可能で豊かなローカルガストロノミー。

取材日:2025年12月

株式会社錦水館 ホテル宮島別荘

\ FMはつかいち × 今こそ廿日市 /

地域密着で新たな価値を届けるため、FMはつかいちと今こそ廿日市が連携し、SDGsを軸とした取材・発信が実現しました。この記事は、ラジオ番組「ECOしま専科」と連動しています。

「ECOしま専科」…
毎週火曜10時~、様々なゲストが公私においてSDGsの取り組みを語り、リスナーとともに持続可能な社会のためにできることを考え続けています。地球のこと、社会のこと、次の世代へ伝えたいことを語り合う〈SDGs+トーク番組〉。インタビュアーは藤井尚子さんです。