医療法人社団 明和会 大野浦病院

医療法人社団 明和会 大野浦病院

― 多様な人材が働く企業紹介 ―

「自分らしく働く」を実現する医療介護の現場

大野浦病院は、回復期リハビリテーション病床や療養型病床を持つ地域密着型の医療機関。医療・介護業界特有の人材不足という課題に対し、2019年から独自の「働き方改革」に取り組んできました。その特徴は、職員一人ひとりの事情やライフステージに合わせた”選べる働き方”。この先進的な取り組みについて、会長室で働き方改革を推進する松原かほりさんと、実際に副業制度を活用する看護師の北倉さんにお話を伺いました。

医療介護業界が抱える「人材パラドックス」

「団塊の世代が高齢者となり、介護の需要は増加し続けています。しかし2022年には介護士の離職者が入職者を上回るという事態が起きました」と松原さんは業界の現状を語ります。
医療・介護業界は、大幅な賃上げが難しいという構造的な課題を抱えています。「ベッド数に対して診療報酬が決まっている中で、他産業のように景気に応じて給与を上げていくことができないんです」。その結果、他産業との賃金格差から人材が流出してしまうという悪循環に陥りやすいのが実情です。
また、リモートワークやフレックスタイム制の導入が難しいのも業界の特徴。直接的な治療やケアが必要であり、チームワークが重要で、緊急対応も求められる。「こうした制約がある中で、当法人に合った働き方を模索してきました」と松原さんは振り返ります。

左:松原さん / 右:北倉さん

職員のニーズから生まれた”選べる働き方”

明和会が働き方改革をスタートさせたのは2019年。まず行ったのが職員へのアンケート調査でした。
アンケートからは「子育て中は仕事をセーブしたい」という声がある一方で、「今のうちにもっと働いて将来のために貯蓄したい」という声も。また「仕事は自分の中の一部」と答えた職員が61.4%に上り、仕事以外の役割も大切にしながら働きたいという価値観が見えてきました。こうした分析結果を踏まえ打ち出したのが「働き方の選択制度」と「副業制度」です。

〈働き方の選択制度〉

看護師、介護士、セラピストは4つの勤務形態から選択できます。
・標準型:年間休日120日の通常勤務
・準ワーク重視型:月に1日多く働く
・ワーク重視型:月に2日多く働く
・夜勤専任型:夜勤を中心に働く

ワーク重視型などを選択して規定の日数を働いた職員には、半年ごとに最大75,000円の特別手当が支給されます。

〈副業制度〉

明和会では「法人内副業」と「法人外副業」の2種類が認められています。
法人内副業は、法人内の別施設でスポットで働くもの。「主業のシフトが出てから、都合に合わせて短時間や月数回働けるので利用しやすいんです」。例えば、病院の事務職員がデイサービスで介護福祉士として働くなど、資格を活かして収入を増やすことができます。
法人外副業については、事前申請が必要ですが、本業に支障が出ない範囲(実質月2~3日程度)であれば、業種を理由に不許可になったケースはないといいます。

「楽しいが勝つ」副業で得られるもの

看護師の北倉さんは、法人外副業として月2~3日、建設業に従事しています。全く異なる業界での仕事は、意外な効果をもたらしているそうで、「楽しいが勝つというか、気分転換になりますし、ストレス発散できるんです。副業が終わって本業に戻る時もリフレッシュして戻れるんです」と話します。
松原さんも「外で得た刺激や経験を、組織に持ち帰ってもらえるといいなと思っています」と期待を寄せます。

「人材不足に対して、すでに働いている職員の労働日数を増やすことで、新規採用にかかるコストを減らせています」。職員にとっては収入増やスキルアップの機会となり、法人にとっては採用コスト削減と人材定着につながる。まさに好循環が生まれています。

ワークライフバランスを支える細やかな配慮

多様な働き方を支える制度は他にもあります。

〈時間単位有給休暇〉

1時間単位で有給休暇を取得できる制度。「子どもの学校行事への短時間参加や通院など、柔軟な働き方を可能にしています」。多くの職員に利用されている人気制度です。

〈男性育休の推進〉

「2024年8月に男性看護師が1ヶ月の育休を取得しました。妻の出産直後は実家でサポートしてもらい、自宅に戻ってくるタイミングで育休を取ったんです」と北倉さん。
こうした事例が増えたことで、他の職員も取得しやすい雰囲気が醸成されました。「最初は『本当にいいんですか』という声もありましたが、今では下の世代が『自分もできるんだ』という安心感を持てています」

「人」を大切にする組織が描く未来

「急性期病院とは異なり、地域で子育てをする人など、通える範囲の住民に長く健康に働いてもらうことを目指しています」と松原さん。実際、職員の年齢層は30~40代の子育て世代が中心。
また、現在11名の外国人スタッフが在籍しており、うち1名は介護福祉士資格を取得しています。

医療・介護業界特有の課題に対し、時代を先取りした多角的な働き方改革の根底にあるのは「職員一人ひとりの事情に寄り添い、多様なニーズに応える」という姿勢です。
人材不足が叫ばれる医療介護業界において、明和会の取り組みは一つのモデルケースと言えるでしょう。働きやすい環境構築への強い意志が、これからも多様な人材が活躍できる職場を作り続けていきます。

取材日:2025年10月22日

医療法人社団 明和会 大野浦病院

  • 設立年:1994年
  • 事業内容:医療事業、介護事業
  • 所在地:広島県廿日市市丸石2丁目3-35
  • URL:https://www.onoura.or.jp/
  • お問い合わせ先:0829-54-2426