有限会社紅葉堂
― 企業の取り組み紹介 ―
美こそは島の命。「揚げもみじ」でつなぐ未来-有限会社紅葉堂

竹内 基浩 様
1912年創業。もみじ饅頭、焼菓子の製造・販売。2002年に食べ歩きできるもみじ饅頭「揚げもみじ」を発売し、宮島の新名物として大ヒット。紅葉堂100周年を迎えた2012年に5代目社長に就任。自慢の餡の味を守るため、島内に製餡工場「稲葉製餡所」を開業。2026年は嚴島神社がユネスコの世界文化遺産に登録されてから30年の節目。「揚げもみじは食品ロスと経営難を乗り切るため、一発逆転のアイデア。」と竹内社長は振り返る。
2025年5月にオープンした新業態店「MAGOJii café&gallery」にてお話を伺った。

紅葉堂のSDGs、キーワードは“循環”
紅葉堂は宮島で老舗和菓子屋として名が通っており、餡が自慢の饅頭や最中を売っていました。1980年頃、漫才ブームでもみじ饅頭が流行ると、急いで手焼きからオートメーション設備を導入。出来栄えの良くない饅頭は試食や子どもたちのおやつに。いくらおいしいものでも毎日食べれば飽きちゃう。
すると饅頭屋の子どもらは「焼いてみた」「凍らせてみた」「揚げてみた」と得意顔でレシピを交換。それでもどうしても余った饅頭は廃棄しなくてはならず、「これじゃあ、食べ物屋としてダメだ。余りを捨てるのではなく、大切に食べるという新しい循環を作ろう」と逆転の発想を。好物の天ぷらなら、僕は毎日でも食べられるなと。家族や料理人と生地から開発しました。
揚げたてのもみじ饅頭は、甘くてサクサクふわふわの触感。食品ロスを減らすことと、楽しく食べてもらうことを願って、ついに、串にさして食べ歩くスタイルの「揚げもみじ」を誕生させました。


ほかすを活かす。竹串を「奉納」して思い出に。
企業は、商品を作る時に捨てるところまで考えるべき。やはり、ゴミは大きな問題だと思っています。
友人たちと相談して6つの事業者でお金を出し合い、容器や串の回収を定期的に見回る専属スタッフを結成しました。時には観光客とのコミュニケーションも楽しみながら直接ゴミを受け取ることをしています。
「揚げもみじ」の串は放置竹林の整備に協力するため、間伐した竹を活用。包み紙には「美こそは島の命です」と印刷して、串の回収箱=「揚げもみじ神社」を祀った店舗まで食べた後の串を“奉納”してもらいます。
ほかせばゴミですが、奉納すれば宮島での良い思い出に。究極は「串まで食べられる揚げもみじ」ができれば…。皆さんからも良いアイデアを頂きたいですね。
(編集注:ほかすは広島の方言で「捨てる」の意味)

主に土日祝に法被(夏はTシャツ)を着て活動している。


未来への投資。母校廿日市高校に「もみじ饅頭の自動販売機」
自販機のデザインは生徒から公募しました。広く表現する場を提供することで成功体験をプレゼントしたいという先輩としての熱い思いもありました。もみじ饅頭は「学割」にして1個100円で販売しています。高校時代は空手部に所属。趣味のひとつはスポーツ観戦で、地域貢献として広島ドラゴンフライズの協賛を5~6年間続けています。昨年、リーグ初優勝を果たした時には嬉しかったですね。これからも未来への投資を続けたいと思っています。


次は、自分が「伝え手」の役目
「揚げもみじ」は今や看板商品でエースです。エースががんばってくれているうちに、新しい挑戦をしようと、業態を変えた「MAGOJii café&gallery(マゴジイ カフェ&ギャラリー)」をオープンしました。自家製餡を使ったメニューがおすすめです。三谷製菓の最中皮で包む「最中セット」は、ぜひ広島千茶荘で扱う「ほしぞら抹茶」でつくる「抹茶ラテ」とご一緒にどうぞ。おいしいですよ!
このカフェから、大鳥居、西松原から手前の御手洗川に沿って散歩道が見えます。道は大願寺へと続いて、嚴島神社を出た人とちょうど交差します。3階立ての日本家屋の1階をカフェバー、2階をギャラリー併設のカフェに改装しています。世界中の人たちが自由に立ち寄って、アートを起点にした発信や交流ができる場所にしたいと考えています。
島の人たちは代々、宮島細工のお盆や重箱を大切に使いながら、しゃもじ(杓子)のような土産物で商品が生まれたストーリーや作り手の技術を現代に伝える努力を続けています。ここで祖父母は饅頭と宮島細工を扱う土産物店を開いていましたが、家業が傾き、本店を残して約20年前に閉じて長らく物置にしていました。祖父、そして父が使っていた鉄製の「円盤型もみじ饅頭焼き機」が出てきて、新しいカフェの真ん中に据えました。
「マゴジイ」は宮島ことばで、蝉の幼虫とか蝉の抜け殻の意。荷物を全部出して、空っぽになった空間を眺めていたら蝉の抜け殻が頭に浮かんできて。空っぽの中を新しいもので満たしていけたらいいなあという思いを店名に込めました。
盆暮れ正月も忙しく働く父が蝉捕りに連れていってくれた時は嬉しかったですね。マゴジイは、宝物のような記憶です。 大切に食べる、大切に使う、作った人のことを思い、食べる人のことを思う、美しいものがこの先ずっと美しくあるために、を想像する力。それはかけがえのない大切な人たちとの時間で育まれていくもの。僕の原点は「宮島」にあります。時には飲みながら語らい、時には切磋琢磨で肩をぶつけ合うこともしながら、家族や仲間たちとこの島とともに生きていきます。

取材日:2025年6月11日
有限会社紅葉堂
- 所在地:廿日市市宮島町448-1
- URL:https://momijido.com/
- お問い合わせ先:0829-44-2241

